「海辺」 大川道雄

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 お揃いの服は母親の手作りなのだろう。肩口の小さな黄色い花から母親の想いが感じられる。少女は母親の大きな体に両手をいっぱいに回している。母親の手が優しくそれを支える。少し離れて海で遊ぶ人たちの姿が右手奥に見える。白い波が返り、母と子の足元近くまで寄せているのだろう。青い空と海と、白い砂浜。そしてまぶしい日の光、寄せては返す波の音、人たちの歓声。少女にとっては初めて意識できた「海」というもの…。母親の手から離れるには、あまりに大きな、そして未知の世界である。少女の表情から、そんな想像ができる。ロマンチックな、物語性のあるすてきな作品である。