「高齢化の波」  諸伏 敏昭

選評: 全日写連関東本部委員 中村 明弘

 深い山間の村、①雨戸を閉ざした無人となった農家が連なる。秋の日はその窓越しのカーテンにも優しく陽光を届けている。②大根洗いの作業中の老夫婦。陽光はおじいさんの手袋に、帽子の庇に、そしてほおかぶりしたおばあさんにも温かい。③たまにやって来る移動販売車で買い物。財布から小銭を取り出そうとする女性の丸めた背に、そして買い物をたっぷり入れたビニール袋にも斜光線が当たる。この山村であろうと、大都会であろうと、陽光は分け隔てなく当たる。つつましやかだが、日々の生活を一つ一つ無駄なくこなしている様子に、カメラの目は秋の陽光のように温かい。対象にきちんと対峙して撮っていることがこの作品から伝わってくる。3枚の構成も、何の衒い(てらい)もなく素直な組み方で、安定感がある。