「富士山と背比べ」  池田 三吉

選評: 全日写連関東本部委員 中村 明弘

 ポートレートは被写体となった人物と撮影者との「関係性」の勝負。それが画面に如実に現れてしまう。それがこういう写真を見る楽しみの一つでもある。この作品、この少女の笑顔、姿に、見る者の心を幸せ感でいっぱいにしてくれる不思議な力がある。それはこの少女自身の豊かさそのものなのだが、それをうまく引き出した作者の対応力によるものでもある。大きな富士も、少女の後ろで一生懸命「かわい子ぶって」澄ましているようにも見える。だがやはり、この子にはかなわない。後ろの富士山を意識してのカメラポジション選びがよかったのだろうが、大きなポイントだ。素直にカメラの前に立ってくれた少女への深い尊厳のまなざしを作者に見た思いである。