「うまく撮れた」 池田是伸

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 写真の中に、色彩のカーブが幾重にも重なりながら画面を作っている。写真を撮ってバックモニターを見る和服姿の女性。隣の女性が見やすいようにと少し体をのけぞりぎみしたSの字が何ともあでやかで美しい。それにのぞき込む女性の着物と優しいカーブを描いた紅葉がかぶさり、着物と着物、それに紅葉と、華やかなボリューム感が生まれている。さらに、その美しい三角の頂点に目を惹く女性のうなじ…とくる。背景の白壁との色の対比がこれらの美をいっそう引き立てている。作者は、この時旅の途中で左肩を痛めていて、なんと片手でカメラを持ちシャッターを切ったということだ。それが幸いしたのか、両手でカメラを構えてきちっと撮っていたら、こんな柔らかで軽やかな作品にはならなかったかもしれない。見事な瞬間の美の共演である。