「脇道」  竹之内範明

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 地から湧き上がるようにして自転車とともに現れた黒づくめの男。白いマスクと赤い手袋…。バックの水玉模様が揺らめき、白い柵の影が白壁に斜めに映って、男の上がってきた地下を暗示している。翻って地上はパトカーであろうか、赤色灯を付けて走り抜けて行く。こんな場面は、場面として意識すらしないのが常なのだろうが、瞬間の判断で切り取った作者の反応の鋭さ、鈍らない感覚に拍手を送りたい。新鮮な写真を撮りたいと、常々そのことを心に止めている作者だからこそ、こんな偶然にカメラを向けシャッターが切れたのだ。なんでもない日常が、何か「輝いて」見える作品である。