「菜の匂いに酔いしれて」  野﨑 三郎

選評 : 全日写連関東本部副委員 神尾 一

 何とも不思議な写真である。被写体は川鵜であるが、それとなく写し込んだ画面右端の花の黄色に春の気配が感じられ、魚達の活動も活発化し、それを狙って川辺の石の上で待ち構えているのであろう。画面構成や、プリント技術が素晴らしく、この鳥の持つ不思議な色合いが良く表現されて居るし、岩の上にとまった川鵜の真の羽色と、水面に映った色の対比、又、水面に映り込んだ周辺の風景を明るくする事で、見る人の目が自然に実物の川鵜に向けられる様にした作者の腕は秀逸である。画面が水平二分割されるのを防ぐ為に前ボケとして入れ込んだ菜の花に、川鵜が見とれている様に見えるのでこの様な題名にしたのであろう。