「疾風」 諸伏敏明

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 画面左から右へと、かなり強い力で引っ張られる作品。流鏑馬の分解写真でもなく、また解説の紙芝居でもない。劇画のコマ割りのようにして3枚の画面が疾走する馬のスピード感や迫力を描き、構成して見せている。①すでにここで矢は放たれている。馬の体は半分。②は駆け抜けて行った瞬間を画面に尻尾だけを残し、③で手綱が強く引かれ馬の体は急転する…。連続して一頭を追ったものではないが、疾走のイメージは見事に結晶している。撮影まえから「絵コンテ」があったのかどうかはわからないが、作者の頭の中には、おぼろげながらそういう構想があったに違いない。それでなかったら②の「尻尾」写真は撮られていないはずだ。見事な作者の術中に気持ちよく身をゆだねて、何度でも見返して楽しみたい作品である。