「休漁日」 石川 昭

 選評 :全日写連関東本部委員 中村明弘

 ドラム缶の中で薪を燃やし暖をとる男①。見るからに漁師とわかるたくましい体付きとグローブのような大きな手。漁が休みの日なのだろう、ゆったりとした時間が男の周囲に流れていく。小屋の片隅で椅子に丸まって眠っている猫②。その場に酒の匂いが残る空瓶の山③。漁港の一角に足を踏み入れ、一枚一枚をていねいに拾い集める様にして組んだ作品。被写体との距離、フレーミングともに「ここしかない」というほどに決まっている。その安定感が、作品の世界へと静かに見るものをいざなう。薪にする廃材の隅にどっかと腰かけてじっと炎を見つめる男の姿が、後の2枚に通奏低音のように流れていく。ハイライトを抑え、トーンを揃えたていねいなプリントに乱れは無く、作品を支えて見事である。