「帰り道」 竹之内範明

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 夕日に染まる道を、手押し車を押しながら歩く女性。差し来る光の方へとまっすぐに歩を進めている。ラインライトに浮き出された丸い背は、彼女の生きてきた時代と時間と暮らしを静かに伝えている。遠ざかるその後姿にカメラを向ける作者の想いが想像される。背景の中に自動車のフロント部分が見える。何か象徴的なものを感じさせてもいるようだ。プリントも丁寧で美しい。作品の内容と映像表現とがみごとに結びついた秀作である。