「共に歩む」 矢島一美

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

細い隧道を抜けていく人と犬。それは、「ふたり」と呼んでもいいくらいだ。その「ふたり」をタイミングよく捉えたシルエットの描写が美しい。長く暗いトンネルの向こうに光が射す。そこに向かう共に生きてきた人と犬・・・・、そんなイメージの写真だ。だが、そのことよりもむしろ、この隧道そのものに長い時間を感じさせる写真的な魅力がある。やや決まりすぎのシルエットは、どうしても写真が甘くなりやすい。それにもたれることなく、この隧道をきちんと描写することは、フォトジェニックな写真の誘惑に抵抗する一つの道かもしれない。

「共に歩む」 矢島一美