「視線誘導」望月導章

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

「こっちよ、こっち!」とお母さん。カメラマンのお父さんもなかなかシャッターが切れないでいる。いつもだったらカメラを構えたお父さんを見ていればいいのだが、桜も気になるし…、といったところか。母親の抱えた赤ちゃんの方はちゃんとお父さんを見ていたりして…。「漫画のような」楽しいシーンである。そんな一瞬を過不足なくフレーミングしていてみごとである。偶然の出会いには違いないのだが、小さなドラマがここに生まれつつあることの予感、予測のような勘を働かさないと、なかなかモノにはできない一枚である。画面の上部を埋める満開の河津桜、その桜色が少女の頬に映り、まさに春を迎えた喜び此処にあり、という感じの作品である。