「野焼きの後で」 林 久雄

選評 : 関東本部委員 中村明弘

  村人総出の野焼き。ひと休みする村人たちの様子にはまだ緊張感がある。その見つめる先が空の鯉のぼりでないのがいい。奥に小さく連なる鯉のぼりが一部煙に隠されていることで画面に奥行きが出た。それにしても鯉のぼりたちも煙たそうである。「七輪の魚焼き」のイメージも呼び起こされてきて「くすっ」と微笑んでしまう。力まず、淡々と写しとめられた写真の中にこの村ののびやかな生活がしのばれる。さわやかで、あたたかな作品になった。

「野焼きの後で」 林 久雄