「憂鬱」 市野正悟
選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘
ビジネスリュックを背負った勤め人が、顔を上げ次々と急ぎ足で通っていく。都会の駅構内の様子であろうか。それらの群れから離れた手前の男性一人…。反対側へと歩を進めている。下向き加減で、ゆっくりした歩みのようだ。作者はその彼に心を寄せたのだろうか…。床のタイルの切れ目がちょうど彼だけを浮き立たせているようで、その存在にふと目が留まってしまう。気になるのだ。何かに駆られるように動いていく群れの中に、作者は「孤独」の影を見つけたのだろう。若い作者の心と呼応する何かあったのかもしれない。写真は撮るものの心の反映でもあるのだろう。

