「休漁日の朝」 池田三吉
選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘
満面の笑顔を見せ、男性がゆったりとベンチに腰かけている。右手に吸いかけのタバコ。左手には箱。まだ火をつけたばかりか…。そこにカメラマンがやってきて声をかけた。笑いながら「どうぞ、どうぞ!」とすべてを受け入れるようなこの温かな表情。人というものを信じて疑ったことが無いというようなこの包容力…。そういうゆったりとしたものを感じさせるポートレートである。漁師用の「長い」長靴もベンチの上に一緒に並んでいる。大きく広げた両足の先には赤い靴。男性の背後のシャッターに描かれたのは背の高い植物だろうか。まるで仏様が発する光を視覚化した「光背」のようだ。漁の休みの日、くつろぐ漁師さんの人間性を見事にとらえた、心温まる作品である。

