「チンドン屋がやってきた」 加藤洋一

選評 : 関東本部委員 小野崎徹

このチンドン屋さん、サキソフォン吹きは、非常に存在感がありますね。きちんと垂直が出ていますが、このチンドン屋さんの男性が斜めに体を傾けていて熱のこもった演奏をしている感じです。目は見えないんですが、子供のほうを見ているんだということは分かりますね。 画面も緊密です。構図的に言えば、後ろの鉦を叩いている人物2人の日傘と、手前のサックスの手の辺りで、大きな逆三角形を作って、更に子供の目線と絡み合っているという、余分なものがなく撮りたいものがきちっと納まっていてインパクトがある画面になっていると思います。 色合いも良いですし、上のほうから照っている難しい光線状態ですが、上手い具合に楽器が反射したりして人物が極端な影になってないですね。子供を見つめながら一所懸命に楽器を吹いてる人と、後ろで全く無関心そうに鉦・太鼓を叩いている人と、取り合わせが絶妙だと思います。 欲を言えば、子供の頭の右がもうちょっと入ってると良かったなと思います。カメラをそのまま振ってしまうと後ろの鉦を叩いている人物が切れてしまうので、もう一歩ぐらい後ろに下がって子供の後ろに右に回り込む感じにすると、子供の頭や肩が見えてきて、後ろの鉦を叩いている人ももうちょっと見えると思います。 でも、なかなか良い瞬間を捉えてますね。(録音テープによる講評を鈴木洋一が要約)

「チンドン屋がやってきた」 加藤洋一