「雨上がり」 市野正悟

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘 

 コンクリートの地面にたまった雨水が、鏡のように見事に世界を映し、上下対象の美しい映像を作り出している。また、ちょうどいい具合に走り抜ける男生徒が写り込んだ。まるで、あのカルティエ=ブレッソンの「水たまりを跳び越す紳士」の写真にあこがれた頃のような何か、新鮮な写真の魅力に酔いしれてしまいそうだ。撮影者はまだ中学生だ。彼の頭の中にブレッソンがいるかどうかは定かではないが、写真を始めた少年の目に飛び込んできた「決定的瞬間」を、見事にとらえた作品である。揺れる手持ちバック、灯りのついた細い街灯がピリッと効いている。