「鮎釣り」 池田是伸

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

釣り人の三態をとらえ組にしたもの。描写の確かさと視点の定まった撮影方法が、安定感のある画面を作るとともに、一人アユ釣りに集中する男の姿を3枚のカットできちんと見せている。左から一枚目の遠くからの視点、真ん中の写真でぐっと近づいて手元まで見せ、三枚目には吊り上げる瞬間の緊張感とその恰好に少し滑稽さもあり…と、うまく物語が完結したようだ。

組写真は撮影した時や場所が同じである必要はない。しかし、その時の「気分」というものがあるから、同じ時のモノから選び出すというのがやりやすいかもしれない。

作者によると、「組めるかも・・・」と直感的に思い立ち、これまで撮ったものから拾い出していったということだ。こういう方法でやっていけば、もっともっと多様な、作者の個性あふれる組写真ができていく可能性が出てくる。

作者が「鮎釣り」で組もうとしたきっかけは真ん中や右の写真辺りにあったと思われるが、組写真では3枚目(並び順ではない)を見つけ出すのが「勝負」のような気もする。写真を組む楽しみは、まさにその辺にあると言える。

ベテランが真摯に組写真に取り組まれる姿が素晴らしいと思ったし、また新鮮な組写真を見せていただけると思うと、例会がますます楽しみである。

(おまけ)

「アユ釣り解禁」と、大きな横断幕が赤い橋の欄干に掛かっているのを、伊豆急行の電車の中からちらっと見ました。その日、伊豆下田支部の5月例会からの帰りで、ぼんやり車窓を眺めていた時に突然目に飛び込んできただけなので解禁日までは読めませんでした。後で調べてみたら河津川の解禁日は6月5日だそうです。走る電車の窓から「アユ解禁」という文字に眠りかけていた脳が反応したのは、例会で見た池田さんのこの写真が脳裏にあったからだったのだろうと、そんなことも思いながら下田から帰ってきました。(中村)