「何見てる」 池田是伸

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 春の光を受け草むらに寝転んでいる猫。カメラを構えそっと近寄る作者。むっくりと上半身を起こすが、「重い腰」はまだ上がらない…。一度に光が顔にそそがれる。まぶしさに細く点のようになった瞳孔が、じっとカメラを見つめている。緊張の一瞬…。イタドリの花が群れ咲き、猫にとってはお気に入りの場所なのだろう。突然の侵入者に昼寝は邪魔されたが、「何か用事でも?」と、堂々とした大きな体を横たえたままの「応対」に少し余裕も感じられる。「おじゃましました…」とカメラマンはそっと引き下がるしかない。流行りの「いいね」は少ない「猫写真」かもしれないが、この猫の存在感はそんなうわっすべりな「いいね」など吹き飛ばしてしまうに違いない。