「鼻息」 沖 ジュン

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

少女と馬、その間に生まれた小さな瞬間のドラマが、この写真の命である。突然の馬の鼻息はこの少女にとって予期せぬできごと。驚いた少女の仕草がかわいい。作者もこれを予期したわけではあるまいが、その瞬間を見事にとらえた。縦位置にしたことで、馬の長い顔だけが画面に入り、異様な光景にユーモアさが強調された。

馬はもちろん、牧場や柵、少女の靴、服などが茶系に統一され、スカートと遠くの牧舎の屋根の薄ピンク色、そして青い空・・・、それらの色彩の調和も美しく、清楚な感じがいい。馬の首の下に、遠景がうまく入ったことも見逃せない点である。「壁ドン」でもあるまいが、何とも楽しい写真である。

「鼻息」 沖 ジュン