「夏草」 (3枚組) 中村紀子

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

赤さびた遊具が置き去りにされた夏草の生い茂る広場。そして昭和を思わせる若者たちの像。ストレートに感じた思いを3枚に組んだ。その素直な表現姿勢と、描かれたもののどこか懐かしさを感じさせる映像とが、「夏草」という二文字に凝縮され、涼しげな印象を与える作品になっている。少し曇った日の撮影で、日向や日陰といった強い「夏のイメージ」はまったくない。それだけに時の流れが止まってしまったような雰囲気に包まれた空間が、一抹のさびしさや、空虚感を感じさせる。3枚のプリントの柔らかさや統一された色彩の優しさがいっそうその感を強くしているようだ。

↓ クリックすると拡大してスクロールします ↓