「路地裏の塀」 竹之内範明
選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘
路地で見つけたお稲荷さんの狐の石像。それだけでも写真になるのだろうが、作者の関心は、その後ろの壊れかけた石塀、さらにその向こう側の人々の日常にまで及んでいる。狐の石像を撮りたかったのではなく、それも含めた大きな空間として、この場をとらえようとしている。狐が横を向いているのがいい。「われ関せず」である。つき離されたような「よそ者」である作者は、後ろに広がる大きな空間に向かわざるを得なかったのかもしれないが、それがよかった。ここには、さりげなく「時代」とか、「今」が顔をのぞかせている。 こういう写真では、画面半分以上を占める後ろにもピントがあったほうがよい。いわゆる「パンフォーカス」である。それに小さく写っている干物屋の人物はなくてもよい。
「路地裏の塀」 竹之内範明