[三者三様」 竹之内範明

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

何かミステリアスな香りを感じる写真である。バラ園の見学者が偶然このような位置に立っている、その三者三様の面白さに思わずシャッターを切ったというのだろうが、実は、この写真にはおそらく作者も気が付かなかったであろう秘密が隠されている。それは、画面左に近景として赤いバラの大きな群れを置き、今度は少し奥右に白いバラの群れ、そして白いカーデガンの女性、その左奥に男性、さらにその右奥に小さく女性…、というように、左右順番に奥へ奥へと、だんだん小さく、リズミカルにモノが配置された面白さである。そしてさらにそのリズムを、奥の植え込みの濃い緑の壁がピシッと止めている。そういうものの総合が、この写真の不思議な魅力を作っているのではないだろうか。演出でも何でもない。これは、ここに「何かある…」と感じた作者が感覚的にとらえた結果が、分析的に見たら画面としてそうなっていた、というものではないかと思う。それとも、竹之内さん、それも計算の上だった・・・と?

 

「三者三様」 竹之内範明