いつかまた海へ」(3枚組) 澤口 善直

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

廃船を主題に、近寄り、乗り込み、また、下から仰ぐようにして撮っている。そのことが、3枚の画面に変化を生み、迫力のある組写真になった。「モノ」的な説明の写真になりやすいのだが、そうなっていないのは、一枚一枚に、「空間」が巧く捉えられているからだろう。カメラを分身の様に自在に扱っている様子も目に浮かぶ。この触れられるような距離感は、「いつかまた海へ」という題名に示されているように、打ち捨てられたモノたちへの作者の想いの深さゆえかと思う。濃いセピア系にしながらもわずかに元の色を残した点も、なかなか工夫がある。しかし、遠い昔と結び付けようとしてセピアを選んだとしたなら、やや安直で、通俗的である。