「御神木」 池田是伸

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 しめ縄で囲まれた御神木は「神が宿る木」ということだが、この写真は、その樹齢を重ねた古木の樹皮の複雑な表情に狙いを定めた作品である。どんな経過からこんな形になっていったのだろうか、それはまったく想像することもできない。ただ、数百年という長い「時の重なり」を思うと、ここにこそ神は宿れり、という思いがする。じっと見ていると、いろいろなものの形が見えてきて、恐ろしげでもある。しかし、見る人によって見えるものがちがってくるという親しみのようなものもある。さらに小さな新芽が育っていることもまた、写真は捉えている。木漏れ日が射す中、被写体に向かう作者の真摯な撮影の様子も浮かんでくる。