「空き家(いえ)」(組写真)  藤田寛司

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 モダンな洋風の雰囲気が残る空き家。作者は外側から覗くだけでなく、中へも入り込んで撮影している。②のタイルの床に積もる土埃や枯れ葉に窓からの光が差し込んでいる。そこに立つ作者の目は、無くなってしまったドアの向こうの荒涼とした風景、窓ガラス越しの茫々たる植物の姿、そして床面に四角い窓の形で映したシルエット…、その三つの四角い光を冷静にとらえている。この②だけでも十分な気がするのだが、作者は①と③とで、外側から描写した写真を組んだ。この2枚は、少し形と影に惹かれてしまったようだ。特に、①は影の奇抜さにシャッターを押したように思われる。この画面下のドア窓に映る外景が私には大変魅力的に見えるのだが…。そのドア周辺を一枚にまとめたらここに住んでいた人たちの想いや、過ぎ去った時間をも感じさせる組写真になったかもしれない…。