「僕のトイレ」  遠藤 啓

選評 : 全日写連関東本部委員  中村 明弘

  幼い男の子が「おまる」に腰かけている。広い空間の中に無防備でいるのに、画面には安堵感のようなものが漂っている。なぜだろうか…。彼の頭の上には飲料水だろうか、大きな青いボトルが数本、そしてホースが乱雑に巻かれた機械など、ちょっと怖そうな物が並んでいるのに…。そうなのだ、まさしくこれが日常のごくごく当たり前の光景だからなのだ。
この子はカメラを構えた作者の存在に特段驚くでもなく、逆に撮影者を興味深く見つめ返しているようでもある。この平穏な空気を乱すことなく、この場に溶け込んで、ごく自然にシャッターを切っている作者の姿も想像できる。この写真は、通りがかりの観光客が見つけた「珍しい光景」などといったものではない。
何といっても、周囲をうまく入れ空間を生かしたフレーミングが、この写真を魅力的なものにしている。