「星を齧(かじ)る」  青木 康

選評: 全日写連関東本部委員 中村 明弘

 うずもれんばかりのプラスチックボールの中に、ちょこんと腰を下ろして、一つを口にする幼子。なんでも「おしゃぶり」にしてしまうその様子にカメラはぐっと近づいた。そのカメラを不思議そうに見返す子。そのキリリッとしたきれいな目が、何かをカメラ(マン)に問いかけているかのようだ。「透明で純粋な世界」からやってきた異星人から見つめられると、俗界に棲むこちらの存在を問われてでもいるかのようで、なんだかドギマギさせられる。人物がやや飛び気味に明るく描かれ、周囲のサイケデリックな色調の中で、現実離れした雰囲気を漂わせることから、選者は「異星人」などと言ってしまったが、口にしているモノが「星」であることも、そんなイメージにつながったのかもしれない。ここには「写真だからこそ生まれた世界」がある。そんな思いにさせる作品である。