「冬の湖」 樋田 進
選評 : 全日写連関東本部委員 中村 明弘
モノクロ写真にしたら、この雨に霞む冬の湖の美しさは表現されなかったかもしれない。①湖面に雨粒が降り注ぎ小さな波紋を作る。水鳥が餌を求め、白く水が跳ね上がる。③小舟の上に立つ釣り人。中央遠くにうっすらと観光船の姿が浮かび上がる。②作者の差す透明のビニール傘に雨粒。傘のふちにたまった水滴は滴り落ちる寸前。遠くの山々が明暗のグラデーションを作り、湖の概観を表す。それにしても傘の二本の骨の細く繊細な様。冬の湖に展開するどこまでも静かな緊張感のある雰囲気が見事に描かれている。そして同時に、何か温かさや優しさのようなものを感じさせるところは、カラー表現だから伝わるものだろう。そうした3枚の構成の妙を、深く味わいたい秀作である。