「寒い朝」   大石 憲一

選評 : 全日写連関東本部副委員  神尾 一

 作者に居れば、忍野八海近くでの早朝の撮影だとか。画面上部には満開の桜の花、そして画面下には野水仙の花が咲き誇り、春真っ盛りと言う感じではあるが、川面に流れる春霞が春まだ浅い山里の早朝の寒気を感じさせる。構図的にも素晴らしく、中段を横切る堤の斜めの線と、そこに茂る菖蒲の葉も良いアクセントになって居る。桜の写真と言うと、とかく近寄っての花びらの大写しや、引いて全体を見せる写真が多い中、この作品は、作者の感じたままの美しさを、川面に流れる春霞を中心に撮影した事で、今までにない、幻想的な春の風景写真となっている。プリント技術も素晴らしく、それぞれの素材の質感が良く出ている。