「Blue sky」 櫻井吉正

 選評 :全日写連関東本部委員 中村明弘

 どうしてこういう写真が撮れたのだろう。なぜここでシャッターを押したのだろうか。
そんなことを考え出すと、なんだか背中辺りがむずむずしてくる。そして、こんな写真が撮れた作者がうらやましくなった。
 赤い三輪車を手押し車のようにして運ぶ女の子、そのとぼけた様子に思わずくすっと息が漏れる。片手をポケットに突っこんだままじっとこちらを見ている眼鏡の少年。空には棒状の雲が、斜めにまるで何かが飛び立った後のように伸びている。そしてその下のはるか遠くに小さく富士が座る。海はネイビーブルーの細い帯のように横一文字に空と白い砂浜の間に分け入っている。もっと「上手に」にフレーミングすることもできたかもしれないのだが、「見えているままに切り取った」というようなこの写真に、私の背中のムズムズ感は収まりそうもない。