「見送る人」 市野貴子

 選評 : 関東本部委員中村明弘

 大きなクルーズ船の船首が鋭い刃先のようだ。まるで画面に突き刺さったかのような緊張感がある。着岸した船を見ようと三々五々集まってきた人々。自転車の男性が船から少し離れて眺めている。この船との距離になんとも言えない味わいがある。巨大なクルーズ船に圧倒されているのかもしれない。さらに手前の女性があらぬ方を見ているというのも、瞬間のことではあるだろうが、画面を作っている。
  巨大な船の接岸という非日常的な光景。カメラマンはそれを少し冷静な目でとらえている。その距離感もこの写真を魅力的なものにしている。