「おいでよ」 森田光衛

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 鴨を呼び寄せようと、川にせり出した小さな桟橋のギリギリの所に膝たちしている少女。鴨はたっぷりと流れる川に遊んでいる。少女の右手は、できればその鴨に触れたいという思いで、桟橋の一番鴨に近い角のところに軽く触れて待機している。その手に秋の日が反射している。何と温かく優しそうな手であることか。少女の運動靴がきれいに並んで、靴の裏を見せている。つつましやかだが、一生懸命な後ろ姿が美しい。もう少しで鴨に触れられそうだ。触れられるといいな…、そんな思いにさせられる作品である。