「微風の微笑み」  加藤 利光

選評 : 全日写連関東本部副委員 神尾 一

 ”深山幽谷”と言う言葉がぴったりの美しい風景写真である。この撮影場所自体は良く知られた渓谷であるが、作者は何回も足を運んで最も美しい瞬間を上手く切り取っているので、これまで見た事の無い様な幽玄な世界を表現する事に成功した。場所を熟知している事、光の読み方の巧みさ、それら全てが融合する事によって創り出された秀作である。画面奥の滝が流れ落ちる場所を右上に配置し、手前の左下にはきれいな流れの中に浮かび上がる川底の岩を配置した事で画面に奥行きが感じられる。更には風によって微かに波立つ水面を扇状に取り入れたた事で、動感も感じられる。良く知られた場所であっても、光の読み方や、カメラマンの立ち位置等を工夫する事で、素晴らしい作品が生まれる見本のような一枚である。