「只見川霧幻峡」  渡邉 修一郎

選評 : 全日写連関東本部副委員 神尾 一

 タイトルからすると、福島県会津地方の黄葉風景であるが、水面の静寂感と相まって、いかにも湿潤で物悲しい日本の秋が良く表現されている。風景写真で重要なシャターチャンス、ピント、構図も素晴らしく絵葉書写真とは一味異なる優れた風景写真となって居る。作者は、この場所で渡し船が来るのを待って何枚か撮った粘り勝ちの結果と思うが、点景に入れた渡し船の大きさも申し分なく、スケール感の大きい作品となった。唯、筆者の個人的な思いとしては、この作品を見た時に最初に目が行くのは、画面左側の渡し船の上の黄葉した部分と、渡し船の所になり、主題が左側の所に縦一列に並んでしまっているので、光が左上から差し込んでいるし、右側に邪魔になる物が無いのであれば、左側はもっと切っても、カメラを右に振って、右側のハイライト部の黄葉の部分をもっと多めに取りれた方が構図的なバランスは更に良くなったかもしれない。これは勿論個人的見解で、このままでも風景写真としての素晴らしさはに変わりはない。タイトルは前田真三や、米未知子氏の様なひらがな交じりの軽快な方が良いと思う。