「 食事中 」  遠藤 啓

選評: 全日写連関東本部委員 中村 明弘

 何のイベントだろうか、揃いのユニホームの少女たちが、会場の一角に陣取って楽しそうに弁当を食べている。年齢も不揃いなこの集団。髪も普段と違い彼女らのパフォーマンスにふさわしくセットしたようだが、それもかなり崩れている。それが日常の中にちょっとした違和感を生み出している。いったいどんなパフォーマンスだったのだろうか。無事に出番を終えて解放されたところなのだろうが、彼女らの素の姿が現れているようでなんとも気持ちがいい。バックの暗い壁の前に浮き出たトラックと桜、紅白の幕で囲われたテントなど。これらと少女たちのこの距離感が絶妙だ。左奥の大人たちの存在も、何をしているのかよくわからないところが「とぼけた」味になっている。これらが形作るこの空間が、春のポカポカ陽気に似たなんとものどかな気分にさせてくれている作品である。