「早春の散策」 金崎 茂

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 順光でとらえた写真の持つ明るさやのどかさが画面から溢れ、画面の下半分を占める土手のボリューム感が上半分を軽やかに浮かび上がらせている。手前の菜の花の黄色の絨毯が土手を行く女性をエスコートしてくれているようでもある。桜もいっぱいに枝を広げ、彼女のコートを優しく桜色に染めている。花で埋まった画面にスカッと空に抜ける小さな空間が生まれ、そこを行く女性が、早春の開放感あふれる世界へと見るものを誘ってくれているような作品である。ここに立つ作者の素直な審美眼が、巧まずして構図意識の高い作品を生み出したということだろう。

EPSON MFP image