「地下通路」 竹之内範明

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 大都会の無機質な地下通路を行き来する人々。淡々と繰り返される日常。黙々と歩む人々に互いのつながりはなく、いつの間にか、一人また一人と姿を消していく。現れる人、消えていく人…。まるで映画でも見るかのように3枚の写真がエンドレスに続いていく。「都会の孤独」がここに集約されているとも思えるほどに象徴的な3枚による表現である。
 日ごろ心の中にもやもやとしていたことが、カメラを向け、シャッターを押すという意思決定によって選択が図られ、イメージとして結晶していく。この作者はそうやって、この場所を通るたびに感じていたもやもやとした何かを、映像にすることができた。なぜ私たちが写真を撮るのか、という永遠の問いかけの答えの一つが、ここに提示されたような作品である。