「ご馳走様」 池田是伸

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

コサギが大きな獲物を捕らえ、今まさに丸呑みしようとする一瞬を、作者もまた、巧く写真にとらえることに成功した。撮られる鳥と撮る人、両方ともが幸せな「時」である。大型の鳥たちの食欲のすごさは聞いてはいたが、この写真からは、静かな、おだやかなものが感じられる。そう思わせるのは、なんだかうれしそうなコサギの表情もそうなのだが、逆光の中にラインライトが柔らかくコサギの体を包み、大きな魚のヒレを光らせ、川面にまぶしい光を踊らせている。そんな光の描写が美しいからだろう。おだやかな川面にこの一羽だけがのんびり(でもないだろうが)食事しているという設定のフレーミングからも、長年にわたって小さな生き物や植物を見続けてきた作者の目の温かさを感じる作品である。動きの瞬間を捉える描写、柔らかな羽毛の描写など、みごとなものである。

「ご馳走様」 池田是伸