「日暮れの頃」  藤田 寛司

選評: 全日写連関東本部委員 中村 明弘

 ①たっぷりと流れる広い川沿いに、高い煙突やクレーンが見える。低く雲がたなびいている。②カワウの一群が木の上の巣に帰ってきた。③風が川面を揺らし、薄い西日を映し静かにざわめいている。何か不穏なものを感じさせる組写真である。3枚の中央にカワウの群れの写真を入れたことが、不気味な感じを与えているのかもしれないが、①と②のスケール感のある光景を、ここまで美しく描き切ったモノクロプリントが、閉じられていく日暮れ時の風景の持つ「刹那」を感じさせるのだろう。プリントの美しさが作品の内容を支えるということを示すよい例だと思う。