「ただ眺めて居たい駅」 靑木 照実
選評 : 全日写連関東本部副委員 神尾 一
岳南鉄道沿線での撮影の様であるが、何とも不思議な感じのする作品である。出発合図をする駅員さんのポーズもピタリと決まり、その背後に有るカーブミラーに写り込んだ電車本体とホームの状況も垣間見える。目を画面右下に転じると、駅構内の数人の人影が写り込み、何をしているんだろう?と、ついつい色々な事を想像してしまう。そこにはこの町の人々の日々の暮らしが写しとめられ、其の人達の暮らしの匂いも感じられる。この写真の素晴らししい所は、主題が一つではなく、一枚の写真の中に複数の物語が写込まれて居て、観る人々の色々な想像力を掻き立てる処ではないだろうか?更に、アングルも新鮮で、難しい光の中での撮影にも拘らず、電車のボディーのシャドウ部や、駅構内の人々の姿も潰さずに浮き上がらせているプリント技術も素晴らしい。