「泳ぎの名手」 遠藤 啓
選評 : 全日写連関東本部委員 中村 明弘
このアマガエル、大海こそ知らないかもしれないが、なんとも堂々とした泳ぎっぷりではないか。ここは畑にあるプラスチックの貯水池。アマガエル君の両足はピシッと伸び、二重三重と広がっていく波紋に、周りの草の影がゆらゆらと揺れている。まるで草たちの声援に励まされるかのようにして、彼は一直線に対岸に向かう。一心不乱とはこういうことなのだという見本を見ているようで、こちらからも声をかけたくなる。水面には青空が映っている。青空の散歩かな?畑の一角の小さな水ための中という小さな世界に、一匹のアマガエルのけなげな姿を見守る作者も、また同時に生きているという当たり前のことがとても愛おしくなる。写真はこうやって、心に何かを伝えてくれる。もちろん、アマガエル君もである。じいっと見入ってしまう、心澄む一枚である。