「昼下がり」 竹之内範明

 選評 全日写連関東本部委員 中村明弘

 入居者のほとんどいない集合住宅と手前の整備中の空間。曲がった金網①。②大きな重機が鉄の爪を地面に突くようにして止まっている。キャタピラの上にしゃがんでスマホを操作する作業員。そして③墓のはるか上空を大型の旅客機が…。奇妙な不安感のようなものが3枚に共通して流れている。①では金網のこちらから何か獲物を狙うかの様にカメラを向けているし、②ではかなり高い所から見下ろすように狙い、③はローポジションからのローアングルの撮影。この「カメラアングル」の違う3枚を大胆に組んだ作品である。そんな違いからか組写真としてどこか落ち着かない感じが付きまとう。だが、それも作者の意図したものなのかもしれない。写真に向かう自分自身に、何か揺さぶりでも仕掛けるかのように異質なものを選び出し、それを組む。作者はこうして何かを見つけようともがいてでもいるかのように撰者には思われる。しかし、①②を受けて③は難しかっただろう。これくらい黒い強い形を持ってこないとそれこそバランスが取れなくなってしまう。③の内容はやや観念的であり写真的にも面白みに欠けるが、作者の気持ちもわからないではない。では、③に何を持ってきたら「昼下がり」の止まったような時間が描き出せるか、いろいろに試してみたい。さらに3枚組だけでなく、こういうテーマで10枚、20枚と写真をためていくことで、作者の新しい世界が見えてくるかもしれない。