「背負う使命(3枚組)」 池田是伸

 選評 全日写連関東本部委員 中村明弘

 長距離を移動することで有名なアサギマダラ。渡り鳥のように季節によって集団で移動するという。その「謎」を解明しようと「マーキング調査」があちこちで行われている。自分の家の庭でもできるということだ。この作品は、そのアサギマダラの翅にマーキングをしている様子を順に構成している。①翅を傷つけないように持つのはなかなか難しそうだ。②は興味深い。記入に当たっては当然ルールがあるのだろう。ペンを持つ指先、記入される文字もしっかり見える。筆圧にきっと神経を使っているのだろうが、書いている人物はその安定感のある様子からベテランらしい。それを取り巻く人の姿も少し見える。そして③放す。フジバカマの花の群れにまた戻っていく…。③では、高い所に一匹をとらえている。この先、海を渡ってどこに行くのだろうかと、そんな余韻を感じさせる。貴重な「マーキング調査」を描いた組写真であるが、しっかりとした描写、三場面の選び、その流れと、よくまとまった作品である。ただ、手元だけが登場しているのだが、人の顔や姿がもっと見えてもいいのではないかと思う。小さな命と向き合う人間の想いが一層出てくるのではと思う。