「新学期」 大石憲一

選評:全日写連関東本部副委員 神尾  一

ランドセルを背負った少年と少女が満開の桜の下を歩きながら、桜の花の方向をチラッと見上げて居る、この見上げた少年の顔が画面に躍動感を与えている。非常に素直で美しい作品である。正に日本の原風景の様で、童謡の世界を彷彿とさせる。この場合には薄曇りの天気も味方して、ソメイヨシノの花びら一つ一つの儚さ、美しさ、が良く表現されて居るし、シャッターチャンスの捉え方も巧い。使用レンズの焦点距離は分からないが、背景も綺麗にボケて、奥行き感、空気感が良く表わされて居り、作者の撮影技術の高さが伺える。構図的には、画面上部の桜の花のボリュウームが少なく、又、画面の下の空間が多い様な気もするが、そんなバランスの悪さは差し引いても、在りし日の自分の記憶が蘇る、懐かしさ感じる作品である。