「ふたり」 阿部美智子

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 噴煙上がる桜島を観光で訪れた二人。呼び止められて振り向いたところをタイミングよくとらえた。作者と二人との関係は? 手前の女性が柔らかな笑顔を見せている。少し前を歩いていた男性の方も振り返る。この微妙な二人の距離感が実にいい。二人は並んで歩いてはいなかったのに同時に振り返った…。瞬間のことだがこの二人のなんとも言えない在り様が写っている。そしてカメラを構える作者との関係性も想像できる。奥深く温かなものが感じられる作品である。青空の下、遠くの桜島、穏やかそうな噴煙、一本の立木、点々と小さく人影、そしてこの二人へとつながるこの空間そのものが静かな幸せ感を醸し出している。