「早春の岸辺」(3枚組) 竹之内範明

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 作品全体からどこか物憂げな春の空気感が伝わってくる。①、土手の河津桜が手前の水面に映り静かな風のそよぎにゆれている。②、早春とはいえまだ冷たい川にしらさぎが餌を探している。左右に桜の花の大きなボケにほんの少し桜色を残し、スポット効果のように中央へと目を引き付ける。③そして桜の花がいっぱいに開いた枝を中心にバックをぼかし、奥行き感を出している。そうした3枚で春の到来を告げる作品になっている。しかし、①②の写真に比べて③が弱い。「花をきれいに撮った写真」で終わっているからだろう。この③には、①②に感じられる作者らしい「発見」や、画面構成の工夫が弱いようだ。①の土手の桜を水面に映し虚像として見せる工夫、②の左右に桜の花を入れたフレーミングで、その合間から「そっと」カメラを向ける作者の存在を暗示させる工夫。そういうモノが③にもあると、作品はもっと新鮮味のあるものになり、作者の感じた「早春」にいっそう共感できるものになったのではないだろうか。