「じいちゃん、バーン」 大川道雄

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 写真を撮ろうと被写体を狙う行為は、ハンターが獲物を狙う行為にたびたび例えられるが、そういう意味ではこのお孫さんたちも「じいじ」にカメラで狙われたわけである。それへの「かわいい」お返しとして、「じいちゃん、バーン」と反対に作者も狙われたという作品である。幼い子だから「指でっぽうポーズ」もぎこちないのだが、作者はこの時、確かに撃たれている。この被写体となったお孫さんたちとの関係性が生んだ瞬間を捉えていて、なんとも楽しい。子どもを撮るには「子供の目の高さで」というのが相場なのだが、ここでそれをやったら、「じいちゃん、バーン」は生まれなかったのではないだろうか…。そんなことを考えると、写真を撮るという行為の面白さ、不思議さを思う。頭でっかちになり、小さな靴が一層小さく写って、二人のかわいらしさも倍増。背景に余分なものが入らず、光が柔らかに二人を包んで、写真を撮る作者も含めこの場の幸福感があふれる作品となった。