「穏やかなナマコの街」 野崎三郎
選評 : 全日写連関東本部副委員 神尾一
なまこ壁で有名な松崎町の長八美術館での撮影との事。モノクロのコントラストの素晴らしさが作者の豊かな表現力を感じさせ、引き締まった冷黒調の黒が素晴らしいプリントである。光の読み方が秀逸で、見慣れている風景の筈なのに、撮影時のアングルや、構図の巧みさで、非現実的なSFの世界に居る様な錯覚を覚える。メタリックな構造物の質感表現や切り取り方や構成の仕方が巧みである。しかしこの様にトンネルの左上部のサークル上の展望台?は全体の形を出すと、下のトンネルの内部の照明と競合して主題が二つ、目に入り視点が分散されてしまうし、画面左の壁の白も強いので、左側と上面は少しカットしても良いのではないかと思う。それとタイトルは、もっとSF的な表現にした方が作品の内容に、よりしっくりと馴染むのではないか?