「外は雨」 樋田 進
選評 : 全日写連関東本部委員中村明弘
雨に煙る山々をバックに高速道路を走るトラック①、三機のクレーンが雨に濡れた窓ガラスを透して遠くに見える②、自動車工場の外にぎっしりと並ぶトラックの群れ③。写真の被写体としてフォトジェニックなものは一つもない。「味気ないもの」とまでは言わなくとも、何が作者の心を動かし、シャッターを押させたのであろうか。その要因の一つは、この「雨が降っている」という状況と、高いところから広い光景としてそれを見つめているということからだろう。雨は人の心をほんの少し日常から遠ざけてくれるし、高い所から見下ろす風景は、これも日常と違った視点を与えてくれる。三枚の構成に、「外は雨」と題名を付けた作者は、営々と続く日常を遠くから、そして雨の中にとらえることで、あらためて日々を生きている自分というものへと意識を向けていったのではないだろうか。冷たい雨の中、写真に人の姿は写ってはいないが、そこに人間がいて、自分もここにいるという共感、連帯のような、何か温かなものを感じさせる作品である。そう思わせるのは、①の雨の中を疾走するトラックの写真のイメージが②③へと展開していく構成になっているからではないだろうか。作者の作る組写真には、そんな人間臭さをいつも感じさせられている。