「初日の出の頃」  齋藤 敏夫

選評 : 全日写連関東本部委員  中村 明弘

  ゆく年を惜しむかのような残月、初日を受けていち早く輝き始める富士、その光の本体が周囲を圧倒しながら今まさに現れんとしている…。西、北、そして東と、シャッターを切っていく。この日の、この一瞬を、このすべてを、丸抱えでとらえようとする作者の強い意志が感じられる。3枚共に異なる光の姿をとらえ、一つの組としたところに、作者のねらいがあり、願いがある。彩度を低く、煙ったような空気感を出したプリントも、静かな作者の新しい年の始まりに向かう真摯な心のありようを感じさせる。心に深く届く作品である。